2016年12月16日金曜日

TOEFLとIELTSの比較を



TOEFL iBT と IELTS。どちらを受けるべきか悩む人も多く、よく比較されていますが、両方に複数回チャレンジしている経験から、自分も書いてみます。


前半でテスト形式についてコメントして、後半では公式に発表されている比較データを紹介してみます。 (※以下IELTSは、Academic Moduleを前提に書きます。)





1. テスト形式

(↑クリックで拡大します)





まずは、全体的な比較から。




◇テスト全体として


TOEFL 
  • 全てパソコンで実施。
  • 全セクションを一度に終わらせる(※途中に10分だけ休憩)
  • 120点マックス(1点刻み)のスコア表示。各セクション(30点マックス)の合計点。



IELTS 
  • LRWは答案用紙への手書き。Sは対面での面接。
  • LRWを一気に実施した後、Sは別のタイミング(同じ日or後日)で実施。
  • 9.0マックス(0.5刻み)のバンド表示。各セクション(9.0マックス)の平均値から算出。



やはり最大の違いは、TOEFL iBTは全てパソコンで完了するという点でしょう。パソコンが並んだ各地のテストセンターで実施されます。人によって開始タイミングがバラバラのため、リーディング中に隣の人がマイクの音声テストを始めたり、リスニング中なのに周りがスピーキングを始めたり・・・と、集中力を保つのがけっこう大変なテストでもあります。

一方のIELTSは、21世紀とは思えないほどのアナログなテストです。ReadingもListeningも答案用紙に手書きで、採点も人によって行われます。Writingも、もちろん手書き。(2016.12現在、日本の会場では鉛筆のみ可。シャーペンすら使えません。) その後、時間をおいてスピーキングテストが行われますが、これは面接官との対面試験です。 

テストの内容そのもの以前に、こうした形式面での好みが分かれるところです。








◇Readingセクション


TOEFL 
  • 1番目に実施。計60分で、全3パッセージ。(※ダミー問題が無い場合)
  • 全40問強で、問題によっては配点が高い。
  • 全て選択肢から選ぶ問題。
  • 1パッセージあたり700語程度。



IELTS 
  • 2番目に実施。計60分で、全3パッセージ。
  • 全40問で、全て同じ配点。
  • 記述式で、選択肢問題・穴埋め・正誤判断など、問題の種類が幅広い。
  • 1パッセージあたり700~900語程度。



セクション別の比較ですが、まずはReadingから。個人的には、4セクションのうちで最も類似性の高いのがReadingだと思います。(実際、TOEFLとIELTSの得点の相関も、Rが一番高いのですが、それは後述します。)

ただし、上記のように、IELTSの方が時間内に処理すべき語数が多い点には注意です。一方で、TOEFLはパソコン画面のため下線を引いたりできませんが、IELTSは紙媒体なのでマークは付けたい放題です。また、TOEFLでは初っ端がReadingのため、集中するのが大変ともいえます(試験室に入場する受験者が随時現れるので、周りがザワついている)。

取り上げられる話題はどちらも多種多様ですが、個人的には、TOEFLの方が、より客観的でアカデミックな内容が多い印象です。(大学1年生向けの、入門レベルの教科書から抜粋しているような感じ。) それに比べて、IELTSではもう少し幅広い分野の話題(アカデミックというより、社会的なトピックとか)も出てくるような気がします。

パッセージ自体の難易度は、自分としてはあまり差を感じません(が、全体としてはIELTSの方が難しいと感じる人の方が多いという感覚です。よりスピードが必要というのが一因にあると思います。)








◇Listeningセクション


TOEFL 
  • 2番目に実施。解答時間あわせて約50~60分で、全6音声。(※ダミー問題が無い場合)
  • 会話が2つ、単独語り系が4つ(※生徒が質問する声が入ったりもする)。
  • 部屋での一斉放送。再生は一度のみ。
  • 全34問で、問題によっては配点が高い。
  • 全て選択肢から選ぶ問題。問題の先読みができない



IELTS 
  • 1番目に実施。約40分(うち10分は答案用紙への転記タイム)で、全4音声。
  • 会話が2つ(最大4人)、単独語り系が2つ。
  • パソコンに接続されたヘッドセットで各自が聞き取り。再生は一度のみ。
  • 全40問で、全て同じ配点。
  • 記述式で、選択肢問題or穴埋め。問題の先読みができる



続いてリスニング。個人的な感覚では、IELTSの方が解きやすい気がします。大きな理由が、問題の先読みが可能なことです。問題用紙が配られるため、音声(IELTSではRecordingsと呼ばれる)を聞く前に、どこに注意しながら聞けばよいかが明確に分かる形式になっています。一方でTOEFLはパソコンで実施されるため、先に印刷された問題をチェックすることができません。メモをとりながら一気に音声を聞き、その後、それに関する問題が順番に登場します(一度次の問題に進んだら、戻ることはできない)。

また、内容面でも、IELTSの方がとっつきやすいように感じます。特に差があるのが単独語り系(モノローグ、1人がメインでずっと話す音声)で、TOEFLではほぼ確実に大学での授業を想定した構成になっており、アカデミックな内容。話題によっては(たとえば宇宙に関するトピックなど)、耳だけで一度で理解するのは難しいこともしばしばあります。一方のIELTSでは、TOEFLに比べて専門的な話が出てくることが少なく(※あくまで感覚値ですが)、また先読みできるため事前に話題がある程度 想像できることと合わせて、取り組みやすいという印象です。

ただし、IELTSは記述式のため、スペルや、単数形vs複数形 など、答える際に細部にも気を配る必要があります。あとは、Britishアクセントが多く登場するため(&それ以外もけっこう登場する)、基本的にアメリカの発音を中心に学校で学んできた日本人にとっては、慣れが必要になってくる点には少し注意が必要です。








◇Speakingセクション


TOEFL 
  • 3番目に実施。約20分で、全6問。
  • 自分の考えで語る問題が2問(各45秒)、文章+音声を要約する問題が2問(各60秒)、音声を要約する問題が2問(各60秒)。
  • マイクで録音する形式。時間制約は厳格(時間が来たら録音ストップ)
  • 各問題が4点満点で評価される(人間の採点官)



IELTS 
  • 4番目に実施。約11~14分で、全3パート。
  • 身近な話題の質疑応答(パート1=4,5分)、2分以内のスピーチ(パート2=3,4分)、より社会的な話題でのディスカッション(パート3=4,5分)
  • 対面での面接形式。1問あたりの喋る分量、時間の制約は緩め(ちょうどいいところで面接官が止めてくれる)
  • 全パートを通じた出来がバンド評価される(人間の採点官)



スピーキングは、かなり形式が異なります。まずTOEFLは、時間制限が厳しく、録音タイムが過ぎると、自動的に録音がストップされます。また、6問のうち半分以上で、文章and/or音声 の要約が求められるため、話す力のみならず、読解力・リスニング力(※特に後者)も強く求められます。つまり、どれだけ話すのに長けていても、要約すべきリスニング音声の内容が理解できていなければ、力を発揮しようがないということになります。

他方、IELTSは、パート毎に目安の時間が決められており、それを過ぎると面接官からストップがかかるわけですが、その間の1問1問の応答に「〇秒」といった制約があるわけではありません(※スピーチ以外)。これは精神的にはありがたいところです。(個人的には、TOEFLの『制限時間内できっちり収めて話し切る』という緊張感も好きですが・・・。) また、要約問題などは存在せず、全て面接官の発話に対して自分の言葉で答えていくという形なので、リスニングが苦手な人には向いているかもしれません。

とはいえ、1つ注意しておきたいのは、IELTSのスピーキングは、人によってスタート時間が異なるため、場合によっては(特に1Dayで実施する日程のとき)待ち時間がかなり発生します。割り当てによっては夕方6時を過ぎてからスタートという場合もあるので、そこは申込時に覚悟が必要です・・・。








◇Writingセクション


TOEFL 
  • 4番目に実施。約50~60分で、全2問。
  • 文章と音声を要約する問題(読解3分+リスニング+回答時間20分)と、お題に対して自分の意見を展開する問題(30分)。
  • キーボードでの入力。
  • 各問題が5点満点で評価される(人間の採点官と、e-raterというプログラムによる採点



IELTS 
  • 3番目に実施。60分で、全2問。
  • 図表などを説明する問題と、お題に対して自分の意見を展開する問題(時間配分は自由だが、20分+40分 という割り当てが推奨されている)
  • 手書き。
  • 第1問:第2問 の比重は1:2で、それらを総合してバンド評価される。(人間の採点官)



ライティングも、まずは形式面での違いが大きく、TOEFLはキーボードでの入力が求められるため、タイピングに長けている必要があります。一方で、あとで文を挿入するなどの操作も簡単なため、答えを編集しやすいという利点も。IELTSは手書きなので、そうした操作はほぼ不可能です。また2016.12現在、日本でのIELTSでは鉛筆しか使えないため(シャーペン不可)、そこも少し不便です。

また、スピーキングと同様に、TOEFLでは読解力・リスニング力が求められる点も重要で、これに比べるとIELTSは取り組みやすそうに見えると思います。ただし、図表の問題はやはり独特で、しかも毎回どんな図表が登場するか分からない(棒グラフや折れ線グラフだけでなく、表や、商品を生産するための工程、さらには地図などまで登場しうる)ところが大変です。

何より、一般に、TOEFLよりもIETLSの方がライティングの採点が辛めのことが多いと言われており、苦労するケースが少なくないようです。(これは、下記のデータのところでも改めて少し紹介します。)









・・・長くなりますが、続けて、両テストのスコアについて、データを紹介してみます。




2. スコアの比較

少し古いですが、2010年に、TOEFLの実施団体であるETSが発表した研究レポートがあります。

(PDFが開きます)

Linking TOEFL iBT Scores to IELTS Scores (ETS: A Research Report)


このリサーチは、「TOEFLもIELTSも受験した」という1000人以上からスコアを教えてもらい、それを比較したものです。


「スコアを送ってくださいー」と呼びかけて、集まったデータの中で信頼できるものを使ったわけですが、やはり成績が比較的良い人の方がこういう呼びかけに反応しやすいようで(確かに、悪かったときの成績を喜んで送ろうという気にはなりにくいですね・・・)、結果的に母集団は、テスト受験者全体と比べると成績が良さげな人が多くなっています。


・・・などなど、完璧なリサーチとはいえませんが、参考になることは確かなので、紹介します。







◇両テストの相関

まず、テスト全体の合計点(IELTSならOverall Band Score)と、それから各セクションにおける、TOEFLとIELTSの相関がどれぐらいあるかについて。




この表は、上記PDFから抜粋したものです(p.8)。


これによると、合計点(総合バンドスコア)の相関係数は0.73となっています。専門じゃないので大雑把な知識ですが、「相関係数が0.7を超えていれば、両者はかなり高く相関していると言える」と考えれば、両テストはこの基準をクリアしているようです。


ここで各セクションに目をやると、最も相関係数が高いのがReadingの0.68です。Readingでは語数の違いはあるもののあまり両者の差はないように感じると書きましたが、相関の方も高い値を示しています。対照的に、Writingの相関係数が最も低く、0.44となっています。ちょっと両テストの違いを象徴しているような感じです。









◇セクション別のスコアの対応

それでは、具体的にセクションごとにスコアがどう対応していたか?
というのを、全てまとめたのが以下の表です。



各セクションでかなり対応が異なってきますが、特にWritingにおいては、

TOEFLで25点レベルの受験者でも、IELTSではBand 5.5にとどまっており(他セクションなら、25点に対応したバンドはどれも7以上)、
ほぼ満点の29点をゲットしてやっとIELTSのバンドが7.5です(他セクションなら、29点に対応したバンドは8.5~8)。
完全なデータとは言えないですが、上の表からは、他セクションに比べて特にWritingはTOEFLよりIELTSの方が採点が厳しめというのは当たっているように見えます。








◇総合点(総合バンドスコア)の対応

最後に、全体のスコアの対応を表にしてみると、こうなります。





ただし、これは当時のETSのリサーチで対象となった母集団から導かれた対応表で、現在よく日本で使われている換算点の列も加えると、次のようになります。(下の『有名版』という列。)





どちらの信憑性が高いかという問題はありますが、TOEFLやIELTSのスコアを受け入れている大学は今のところ(2016.12現在)、真ん中の『有名版』という方の換算点を使用しているケースが多いのではないかと思います。(例:英語4技能試験情報サイト『資格・検定試験CEFRとの対照表』) 

一応、真ん中の列のスコアも、ETSによる別の資料をもとに算出されているんですが・・・(*1)けっこう差がありますね。(例えばTOEFLで71点の場合、左の列からするとバンド6ですが、有名版ではバンド5程度となります。)


*1
以下で閲覧できます(PDF)。これ自体は厳密にはTOEFLとIELTSを比較したものではなく、TOEFLのスコアを、CEFRという枠組みに当てはめるとどうなるかという点を考察したものです。それを、IELTSのCEFRの枠組みでのバンド分類と組み合わせて、力業で比較可能な換算表にしたのが、上記の2,3列目の対応表だと理解してます。





3. まとめ

ここまで長く書いてきましたが、最終的には「自分に合ったテストを受けるのが一番」なのは間違いなく、じゃあどちらが向いているのかを知るには、正直、トライしてみるしかない気がします。

とはいえ、どちらも受験料が高いので、お試しで受けるにしてはハードルも高いのは確かです。
そういう場合は、まずは問題集でチャレンジしてみて、合っていると思う試験を受けてみるのも良いかもしれません。


まずTOEFLについては、「公式ガイド」と、「公式問題集」の両方について、過去に以下の記事で紹介しています。良かったら参考にしてください。

公式ガイド
公式問題集


IELTSは、定期的に新しい公式問題集が販売されています(が、ちょっとお高めです・・・あとは音声ダウンロードでトラブルが発生した人が多いようなのが心配点)。それぞれ、4回分ずつ問題が入ってます。



 


また、日本語版で、「日本初!ブリティッシュ・カウンシル公認のIELTS問題集」と銘打った問題集が2015年に販売されています。(こちらはまだしっかり読んでいないので、また使ってみたらレビューを書きたいと思います。とりあえず今は紹介だけしておきます。)




また、このほかにTOEFLやIELTSの情報は定期的にアップデートしていきたいと思っていますので(最近はIELTSメインの記事が多いですが)、そちらも参考にしてみてください! では!





Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...